今を生きている若い世代を羨ましいと思うのは自己主張できるツールが売るほどに存在していることだ。SNSを駆使したセルフプロデュースはプロ顔負けのアイデアで煌びやかだが、主人公である本人自身の姿はどれも同じに見えてしまう。美しく可愛く魅せようと修正アプリで造り替えたルックスは金太郎飴のようで気持ちに響かないが、それでも世界にアピールできるだけ100倍幸せ。1980年代、平和ボケと言われた私たちの世代は社会にアピールするツールなど皆無だった。あえて言うならTVオーディションに応募するか、原宿の竹下通りを歩いて胡散臭いオッサンにスカウトされるくらいが関の山だったが、そういう他力本願は競争率も限りなく高かった。2000年以降になると他人と交流できるツールが溢れ出したが、人々の欲求は電子メールの便利さを超えたLINEやツイッターなどに移行していく。不特定多数とのやり取りが可能となった今では自己主張の応酬(相手に対する寛容がない独り相撲)に終始し、インスタグラムやフェイスブックは自己確認の昇華ツールとしてその取り巻きや仲間にオートマチックで紹介される。21世紀の人類はプライバシー(Privacy)を剥がされながら日々生きていく悲しい運命だ。「明日の風」「原題:Carry On Till Tomorrow」 バッドフィンガーhttps://www.youtube.com/watch?v=sC24GI9V_Cs