株式会社　津幡石油        (tsubata sekiyu)

告知コマーシャルの恩恵

1992年2月にこの収録されたコンサートは、日本テレビで放送されました。放送日が確定されるまでは不安でしたが、決定した時は誰よりも安堵したことを昨日のように感じます。打ち上げのパーティでは事業局のプロデューサーの人と意気投合、その人曰く「これからの来日アーティスト告知CMを頼みたい」。告知CMはとにかくチケットを売るために「まずはカッコいい映像でア－ティストの印象を損ねない、しかし斬新で目立つもの」素材も豊富な人と限られたものしかない人もいますので制作する方は気を使います。スタジオに入る前に粗編集をするのですが、その前に自分の中で編集のエフェクトを考えたりしました。その中でも、特に印象に残るのはヘビーメタルバンド「SKID ROW」の15秒です。放送された後に「この告知CMは誰の仕上げ？」興行元が褒めているというのです。「チケットが売れている、これからもよろしく」と言われた時は、「認められたのか」と思いました。この仕事も次々と依頼されます。95年の「THE ROLLING STONES」来日コンサート告知では、ナレーションの声も自分でという、コンプリート版をやりました。これで当分はやっていけるはずだったのですが、世の中はバブルとともに終焉していました。

マイケルとボビー

五反田に事務所を構えた私のところには、仕事の依頼がどんどんきます。不思議に感じる余裕もなく打ち合わせによく行った場所は六本木。スタジオワークも六本木でしたから、時間に無頓着なこの私も、精神的には楽でした。華やかさでは負けない世界です。やはりここは六本木がカッコいい。五反田に事務所を置いたのは、当時築地にあった電通さんへ行くのに一番便利だったのが都営浅草線でした。（自宅も沿線沿いにありました）1989年以降、航空会社、通信会社、HMV、各TV局が主催するイベント、Vシネマ音楽、モーターショー、幼児教育ビデオ等あらゆるジャンルのオファーに応えました。1991年秋、スケジュールが縦になる日々をこなしている私のところに、思いもよらぬ仕事が打診されます。外国人アーティストの来日コンサートライブの映像の仕事です。しかもONAIRされる予定があるとのこと。そのミュージシャン名を聞いた私の心はドクンと震えました。大学時代にロックバンド活動をしていたころ、擦り切れるほど聴いていたAORミュージックの両雄「マイケル・フランクス」と「ボビー・コールドウェル」だったからです。

スピンオフしてみます

映画「クライマーズ・ハイ」という邦画をご覧になった方はたくさんいると思いますが、1985年の飛行機事故は国内を凍りつかせました。当時、私は大学を卒業した後、自分で内定を得ていた就職先（広告会社）を、父親に強制的に諦めさせられ、自らの意思とは正反対である石油元売の研修生となり、消極的な仕事生活の研修最終年の春を終えていました。実家には資格試験の勉強が残っているとしながら、もう無職になって5か月が経っていましたが、私にとっては「もう一度業界に挑戦する」との意思確認に十分な時間でした。腹を括ってしまえば、後戻りできません。実家はどうせすぐ戻ると考えていたでしょう。私は片っ端からリクルート就職情報誌を買いあさり、条件の合う会社を探します。でも世間はそう甘くありません。いつのまにか、心が萎えていたのでしょう、さらに2か月ほどプー生活を経験、しかし、明日の見えない日々に恐れをなした私は、秋風の吹く頃に、ある就職情報に掲載されていた音楽出版社の募集記事を見つけます。面接を受けると、運よく合格（後に補欠合格と聞きました。また資格試験にも合格）となり、中途入社の形ではありますが、マスコミに潜り込めたのでした。入社早々、早速レコード会社の営業です。この出版社にどれだけ企画書を書かされたことかわかりませんが、後のHMVイベント台本作成の基礎になったのは言うまでもありません。（画像は92年HMV池袋トークショーより）

HMVは祝25周年パート3

現在の店舗(イオンモール含)数54店舗は北海道から九州に及んでいます。残念ながら金沢市にはないのですが、HMVに教えていただいた事は山ほどあります。ストアの恥じにならないようなキャッチコピーやジングル音楽を制作し、カッコいいイベントになるように出演させるDJパフォーマーを会場に見に行ってスカウトしたり、レコード会社から営業されてアーティストの推薦を受けたり、（因みにあの大会社エイベックスが出来たての頃で松浦さんがアーティストの宣材を私の会社に持って来られたことは、今でも鮮明です）モデルの女の子をオーディションして決めたりと、今考えれば、思いっきり経費使って、思いっきり業界の真ん中で仕事していた1990年でした。

HMVは祝25周年

今から25年前の1990年、ＨＭＶ渋谷店が全国で初出店しました。この私は、そのストアオープンイベントのディレクターの1人として参加しました。これは感慨無量でした。あのころは完全にバブル経済の真っ只中。1万円札をかざしても、タクシーが停車してくれない奇跡な時代でした。都内のどこへ行っても溢れんばかりの熱狂の渦に巻き込まれていた人々の心は、「得体は知れないがこの魔法に罹ったかのような日常」が永遠に続くと確信していました。HMVはその後も次々と店舗をオープンしていきます。原宿店、池袋店、新宿店、銀座店、と関わったオープニングイベントの中でも、原宿店と池袋店は最も印象深いイベントでした。ここは当時、「ラフォーレ原宿」と呼ばれて、親しまれていました。私は広告代理店の担当者とともにHMVブース内でパーソナリティにトークをさせながら、ラフォーレの前に簡易ステージを建てて、ストアクローズするまで、ノンストップミュージックライブを敢行したのです。その時のゲストの候補にシャ乱Qも入っていたのですが、残念ながらライブアクト（当時の彼らは新人バンド）に至らず。しかし、HMVも私たちもノンストップライブをクローズするまで実施するなんて、今は当たり前でしょうが、当時は大変でした。私はこのイベントの成功で、その後も大きな仕事をオファーされていきます。